さて、どれだけの人が『リストラ』という言葉の本当の意味を知っているだろうか。
英語表記して正式名称はrestructuring(リストラクチュアリング)。
これは経済学部の大学生以上になれば答えを間違えない。
意味は、構造を改革すること。特に、企業が不採算部門を切り捨て、将来有望な部門へ進出するなど事業内容を変えること。企業再構築という、要は企業内部のスリム化とか合理化を指すのだ。
ところが、日本の常識は世界の非常識というだけあって、この言葉さえも日本人は意味を履き違えている。
まあ、おバカな大手マスコミが、大企業経営者(=近年の経団連トップ連中)の都合のいい解釈を、あたかも正しいかのように報道しているから、そうなってしまっているんだけど、日本では『人員削減』を意味している。
もし、外国に行って『リストラ=人員削減』なんて言おうものなら、知ったかぶりした大馬鹿者のそしりを受けること間違いなしなので気を付けた方がいい。
言っておくが『不採算部門』=『人員』ではない。なぜなら労働者失くして企業は成り立たない。そして人員を育成しなければ、その企業に将来はない。
今、巷は不景気真っ只中なんだけど、ここで人を切る企業は、間違いなく例え景気が回復基調に乗ったとしても、それに便乗することはできない、と断言してもいい。
なぜなら、人がいないのに、業務を拡大できるわけがないからだし、仮に慌てて人を入れたとしても、その人たちが本当に使えるようになるまでは、一朝一夕はもちろん、週単位や月単位で足りるはずもなく、年単位で考えなければいけないし、例え経験者であったとしても、その企業でその経験が生かせるようになるにしてもやはり、それだけの年月はかかってしまう。要するにその間のコストが無駄になって結局は利益に結びつかないのだ。しかし、元からいた人間であれば、すでにノウハウがあるから、不景気において、どうすれば合理化できるかを考えることができるのである。そのアイディアがよりいい方向へ向かい、引いてはコストダウンに繋がる。
だからこそ、不況時に人を切ることは、その企業にとって不利益に働くから、回復基調に便乗できないということだ。
ましてや日本人は、こと技術力において世界一を誇る。そんな日本人を差し置いて、安価な新興国の人員を雇うなんてのは自殺行為で、日本人以上にいいものを作れるわけがないんだから、商品の品質低下がさらに企業への信頼を失墜させ、結局は立ち行かなくなる。
もっとも経団連のトップ連中は、日本が落ちぶれる前にこの世からおさらばしてしまうから、安易に超短期利益に突っ走ってしまっている現実があって、特に会長の御手洗なんかはいい例だろう。今回の不景気でどこよりも真っ先にクビ切りを敢行したのはキャノンだった。
ということは裏を返せば、不況時こそ、人を育てるチャンスであるし、企業の未来戦略のための礎である。
徹底的に合理化のためのアイディアを出せる時期にあてられるからだ。
作業工程の何が無駄なのか、この時期にどうやって顧客を掴むのか、今まで浪費するだけだった経費に何かリサイクルできるものはないかと知恵を絞るのがこの時期だし、これはその企業にいる人間でないと見えないことでもある。
そして、それは間違いなく企業の将来に役立つことに他ならない。
ところが今、日本では真っ先に人員削減に走っているのである。これでは確かに短期的には人件費分、利益に転嫁することにはなるが、その時は良くても次に不況期が訪れたときに絶対に対応できない一番間違った手段でもある。資本主義経済である日本は必ず好不況の波が訪れる。それを踏まえた上で経営戦略を立てなきゃいけないというのに、完全に忘却してしまった経営者が多いのはどういうことだろうか。その場凌ぎでは意味が無いのである。
労働者は当然、企業のために働いているのだが、企業は労働者の生活を保護している意識を持たなくちゃいけない。なぜなら労働者=消費者、つまりは顧客だからだ。
要するに労働者を切るということは顧客を切ることであり、将来的に見て、決してプラスに働くことはない。
景気を回復させるだけでなく、将来にも希望が持てるようにするために、今の経営者に求められるのは故土光敏夫氏の精神だろう。
氏は不況期において人を切ることも給料支給額も下げることをしなかった人物で、そのためにどうしたかというと、自らの生活費を削って社員を守ったのである。
社員を守ることで社員は経営者に恩恵の念を抱く。それは会社のために働こうという意欲に繋がるものなのだ。
今の世で言えば、過大評価かもしれないが鳩山総理の母・鳩山安子かもしれない。
鳩山家は確かに日本有数の資産家ではあるが、私財を投入して息子である鳩山総理の政治活動に充てていたのだ。
おバカな大手マスコミは違法献金だと騒ぎ立てていたが、違法献金とは収賄性があって初めて立証させるものである。
もし、おバカな大手マスコミの大本営発表に乗せられて、鳩山安子はけしからん、なんて言っている経営者が居たなら聞いてみたい。
あなたは、この不況期において、社員を守るために、私財を擲っているのか、と。
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